公益社団法人日本愛玩動物協会

 

ペット飼育可の避難所の用意

「市川少年自然の家」(ペットを同行した被災者受け入れの取り組み)



 本協会では、福島県警戒区域から避難される飼い主とペットへの支援として、市川市・市川市教育委員会などのご協力の下、「市川少年自然の家」(ペット受け入れ避難所)を用意し、獣医療や飼育用品などの提供を行いました。

 

 これまで大規模災害の発生時に、「ペットの同行避難を全面的に受け入れることを明言した避難所」を「被災地外の自治体が用意する」といった被災者支援は例を見ません。

 

 日本で行われた被災動物救援活動の歴史の中で、画期的な取り組みとなった「ペット受け入れ避難所」の設置に至る経緯を以下にご報告します。




 本協会でペットが同行できる避難所の確保に取り組んだきっかけは、いわき市在住の会員からの1本の電話でした。

 その内容は「原子力発電所からの放射性物質漏れ事故のため、大勢の住民が警戒区域内からいわき市内の避難所に避難してきている。同行避難したペットもたくさんいる。しかしいわき市から、さらに福島県外の避難所に移動する際に、

次の避難先がペット不可だったり、自治体が用意した避難者用のバスにペットを乗せられなかったりという理由から、せっかく自宅から一緒に避難してきたペットを、泣く泣くいわき市内の避難所付近に放して出発している」というものでした。

 そこで本協会では、ペットを同行して避難できる避難所の用意と、ペットとともに避難できる交通手段の手配に取り掛かりました。

 しかし、そうたやすくペット受け入れ可の避難所が見つかるはずはありません。建物の準備だけでなく、そこでの避難者の生活や、ペットの飼育に関するサポートなども検討しなければなりません。八方手を尽くし各自治体や避難所に交渉しましたが、避難所確保は難航しました。

 

 輸送手段については、栃木県支部会員に協力の申し出をいただき、ペットと同乗できるバス3台とドライバーを、無償で提供いただけることになりました。

 また避難中のペットのパニックなどに備え、各バスにボランティアの犬のインストラクター1名ずつが同乗するよう安全対策も行いました。

 

 同時に、避難先に到着した際のペットの健康診断やワクチン接種のため、獣医療の無償提供をいただける協力企業も見つかりました。

 残るは、避難所の確保です。

 

 万策尽きたかと思ったとき、千葉県支部の協力と千葉県支部会員で市川市市議会議員並木まき氏のご尽力により、市川市・市川市教育委員会等のご理解とご協力を得て「市川少年自然の家」での被災者100名の受け入れが決定したのです。

 受け入れ条件は、自宅が福島原発から20km以内にある被災者であること、また同行したペットは、施設敷地内に設置したペットの専用テントで飼育すること、ペットは飼い主自身がルールを守って世話をすること、などでした。同施設に入居した被災者に対しては、3度の食事と可能な限り家族単位の個室の割り振り、ベッドや布団、お風呂の提供などの支援が用意されました。


 受け入れ準備が整い、私たちは3月23日に郡山市内の大型避難所である「ビッグパレットふくしま」に入居者募集案内に伺いました。避難所の一角に集まっていただいた飼い主さんたちに条件を説明し、また郡山保健所などからのお声掛けもいただき、結果約50名の入居希望者をご案内することとなりました。

 早速東京に戻り、関係各所との連絡や打ち合わせを進めていましたが、出発の前日に千葉県の水道水から高濃度の放射性ヨウ素が検出されたことや、いざというときになり家族内のお年寄りが福島県を離れることを躊躇されたこと、その他の理由などから、希望者1名を残してキャンセル、という事態になってしまいました。

 準備を整えていただいていた関係各位に多大なご迷惑をおかけしたことをお詫びするとともに、飼い主(人)の避難には、多くの繊細な問題があることを痛感した出来事でした。

 その後、市川少年自然の家には4家族・犬7頭と猫2匹が入居。

 AHBインターナショナルの獣医師や動物看護師の協力により、健康診断やワクチンなど獣医療の支援とフード類をご提供いただきました。

 

被災者の方とそのペットには、市川市のご協力によりスクリーニングを受けていただきました。

 

ボランティア獣医師の方に避難所にお越しいただき、健康診断などをしていただきました。


 

本協会千葉県支部は、ペット飼育スペースの設置や飼育サポートなどを行いました。

 

動物たちは、ペット専用テントでケージ飼育となり、ペットのお世話は飼い主さんご自身にしていただきました。

 


 本協会千葉県支部では、連日同避難所を訪れ、ペットスペースの衛生管理や物資の管理、指定された散歩コースの見回りや清掃、飼い主さんからの相談対応など、さまざまな飼育支援を行いました。

 飼育テントや飼育スペースは市川市や少年自然の家の職員の皆様がお手伝いくださって設置いただきましたが、さらに地元青年会議所OBや被災者の方々とともに小さなドッグランを増設しました。

 一方的な支援ではなく、被災者・企業・地元青年会議所OBなど、さまざまな立場の方が協力して運営に取り組むことができたことは、「共助」の観点から非常に意味のあることだと感じています。

 また、市川市の被災者・被災ペット支援への取り組みに対し、市川市民から支援メッセージや義援金いただくなど、高い評価をいただいた旨、市川市企画部よりご報告いただきました。

 

 「市川少年自然の家」は施設の通常事業の運営都合上、4月末で避難所としての役割を終えました。

 その後の避難施設として同市内にペット同室同居可の施設をご用意いただきましたが、こちらは入居者募集時期が東京電力から被災者への一時金支給時期と重なり、すでに滞在している各地の避難所から移動したくない(所属しているコミュニティから離れたくない)、といった理由から、入居希望者が最低人数に達しなかったため実施に至りませんでした。

 「市川少年自然の家」に入居されていた被災者の皆さんに対しては、市川市が用意くださったペット可の住宅に入居したり、知人を頼って転居されたりしており、現在も本協会千葉県支部、東京都支部などにより、継続的な飼育支援を行っています。




 ここで報告したペットを同行できる避難所「市川少年自然の家」での取り組みは、私たち救援側に人の避難の難しさなどさまざまな問題を投げかけました。

 この貴重な経験を活かし、今後の災害発生時に備え、情報の収集、分析、対策の検討などとともに、避難時のペット同行と避難所での受け入れや住み分けの受け入れ態勢作り、法整備などを進めていくことが必要だということを、改めて痛感した取り組みとなりました。

 

協会本部の活動

被災した動物たちへの救援活動報告

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