猫の適正飼養

【はじめに】

・・・猫の素晴らしさをご存知でしょうか?
適正飼養すれば、犬とは一味違った感動を与えてくれるはずです。




【猫を飼う方へ】

★ 不妊・去勢手術をしましょう。(適期は生後6ヶ月ころまでに)

・ 数々の病気を予防できます(メス:子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、子宮ガン、乳ガン、卵巣ガン、子宮内膜炎 オス:睾丸腫瘍、肛門周囲腺腫、前立腺肥大、セルトリ細胞腫・・・等等)。
・ 望まれない子を生ませない(飼い主責任)。
・ 発情がなくなるのでストレスが溜まらない。
・ 穏やかな性格になり、飼いやすい。
・ 手術はかわいそうだが、しない方がもっとかわいそう。

★ 早期(生後6ヶ月ころまでに)不妊・去勢手術をお勧めします。 
病気に対する予防効果が高い。
・ トラウマにならずに済む。
・ 術後の回復が早い。
・ 発情経験前に手術すると問題行動(スプレー、外へ出たがる、かん高い鳴き声・・・等)が軽減できる。

 猫を飼うことになったら、かかりつけにする獣医師と相談の上、早期に手術をすることをお勧めします。
 また、適期を過ぎた猫だから手術をしなくていいということではありません。
 手術をしていなければ、猫のためにも早めにかかりつけの獣医師に相談してください。

早期不妊・去勢手術についてはこちらもご覧ください

★ 室内飼いをしましょう(「外に出さないとかわいそう」は一昔前の考え方)

・ 基本マナーとして、近所に迷惑をかけないですむし、猫を嫌う人を増やさない。
・ 伝染性の病気(猫エイズ、猫白血病、猫伝染性腹膜炎など)を予防できる。
・ ノミやダニなどの外部寄生虫を防げる。
・ 猫同士の喧嘩による怪我がなくなる。
・ 交通事故や虐待に会わないですむ。
・ より人に懐く。
・ 尿づまり等の病気に早く気付くことができる。


☆ 室内飼いにするヒケツ
*子猫の場合
・ 飼い始めた時から一切外に出さないで飼うと、出たがらない。
・ 最初の発情が来る前(生後4ヶ月頃)に不妊・去勢手術をすると効果大。

 *外出自由の成猫の場合
・ 不妊・去勢手術をすると外に出たがらなくなる可能性がある。少なくとも行動範囲は狭くなる。
・ リードを付けての散歩がストレス解消になることがある。
・ 長期戦覚悟で頑張ると、落ち着く場合がある。
・ 庭をネット等で囲って自由に遊ばせる方法もある。


☆ 室内でストレスをためない工夫

・ 上下運動ができるよう工夫する。(猫タワー、家具を段々に置く、壁に斜めに棚を取り付ける等)
・ 2匹で飼うと淋しがらずに済むし、じゃれてストレス発散になる。
・ 飼い主も一緒に遊んでやる。
・ 飽きの来ない遊び道具を与える。
・ お気に入りの場所を作ってやる。




【耳寄り情報】
・ 猫はぬるま湯を飲みたがる。微温湯(体温±2°=36°〜40°)を好む。
・ 夜中に猫が騒いで困っている方へ→あなたが寝る前にしっかり猫と遊んであげましょう。
・ 歯周病予防のために週1回は歯磨きをしましょう。
・ ブラッシングはできるだけ多くするようにしましょう。
・ 複数飼いの場合、後から来た子には、慣れるまではしばらくケージに入ってもらうとうまくいく場合が多い。
・ アメリカでは猫はOKでも犬は×という借家が多い。




【尿づまり対策】
尿結石症とかFUS(泌尿器症候群)という病名で、去勢済みの3〜5歳のオス猫に多いようです。
尿がスムーズに出なくなるので、トイレに頻繁に行くようになります。
原因ははっきり特定されていないようですが、太り過ぎも原因の1つと考えられています。
手遅れになると命に関わる病気なので、要注意です。
尿づまりを予防するのに最も簡単な方法は低マグネシウムのフードを与えることです。
マグネシウムの含有率が0.1以下のフードが良いと思います。
フード袋に表示されているので、確認してください。ちなみに私の愛猫にはマグネシウム0.073のフードを与えて、尿づまりを改善しています。
もし、貴方の猫が度々トイレに通ったり、トイレでしゃがんでいるのに、尿がほとんど出ないという現象が見られたら、すぐに獣医さんに診てもらってください。



【オス猫の尿路疾患について】

アメリカで活躍中の西山ゆう子獣医師からオス猫の尿路疾患と去勢手術について以下のような見解をいただいております。
「どうしよう?」とお悩みの方は検討のための資料としてご覧ください。

オス猫の去勢手術ですが、まず、アメリカでは、早期は生後4ヶ月未満(生後2ヶ月から4ヶ月)に行なうと定義しております。
そして、生後4ヶ月から初回の発情(生後7ヶ月くらい)(オスだから明確は発情はありませんが、性成熟する頃という意味)がくる、生後7ヶ月くらいに行なう場合を、Classic(クラシック、古典的?従来型?)と呼んでいます。
性成熟に達した、生後8ヶ月以降に手術する場合を、「遅延型」と呼んでいます。

かなり大掛かりにやった統計があるのですが、オス猫の場合、古典的去勢をした猫と、未去勢のオス猫を比較した場合、確かに、去勢した猫に多く、尿路疾患(おしっこつまり)が発生しています。
早期去勢をした猫と、未去勢を比較した場合も、同様の結果。
しかし、古典的去勢と、早期去勢をした猫には、発生率に差はない。すなわち、去勢をする時期が早いから(生後4ヶ月以前)といって、尿路疾患の発生率が高くなるわけではないのです。

また、遅延型の去勢でも、古典的去勢でも、大差はなかったと記憶しております。

確かに、去勢をした猫に、尿路疾患は多発しますが、だから去勢はすすめられない、という理由にはなっておりません。(アメリカでは)
去勢をすることにより、より多くのメリットがあるゆえ、例えば私が、「去勢すると、おしっこ詰まりが多く発生するから、しないほうがいいですよ」と言うと、マルプラクテイス(通常、一般的とされている医療ではない。すなわち、普通ではない方法を薦めたということ)になるのです。

また、去勢したオス猫に尿路疾患は発生しますが、メス猫にも少数ながら、発生しています。また、未去勢のオスにも、少数発生しています。去勢したオスのほとんどに発生しているわけではありません。
この尿路疾患の典型は、去勢している、太っている、水をあまり飲まない猫、動くことが嫌いで、寝てばかりいる、ドライフードが好き(あるいは、主食としている)、室内猫、若年から中年(2歳から9歳くらい)、そして、最近ちょっとしたストレスがあった、(引っ越したなど)といった要素があげられています。また、多頭飼育の猫に、頻発するという報告もあります。

すなわち、去勢をしていても、(早期であれ)、運動が好きで、細くて、水をよく飲む猫は、めったにかかっていません。それゆえ、この尿路疾患を予防するために、去勢をしない、というのは間違いとされています。

「尿路疾患をなるべく予防するために、早期はしないで、遅くしたほうがよい」という話を、何度も聞いたことがありますが、医学的根拠はないように感じております。私が知っている限り、手術の時期を遅らせることによって、尿路疾患の発生率が低下した、という、証明された文献はないはずです。
遅延型まで待って、なるべく尿道を、太く発達させてから、去勢をする、そうすると、将来、あまり尿路疾患にならないのでは、というのは、仮説に過ぎないと思います。

ただ、これはあくまでも、私の想像ですが、1歳まで待つと、当然、猫も男性ホルモンの影響で、大きく、がっしりしますよね。そして、かなり活動的な猫になると思います。(テリトリー意識があるので)。そこで去勢をしても、活発な性格はあまり変わらないかもしれません。それゆえ、遅く去勢すると、今までの癖で、外に出て徘徊したり、運動量の多い猫のままになるのかもしれません。そういう猫は、上記のように、尿路疾患が発生しにくいとも言えるでしょう。




【捨てられた子猫を拾ったら】

拾ったあなたが、その子の世話と貰い手探しをしてください。
世話が難しい場合はあなたの身近な人に頼んでください。
決して愛護団体にまかせようとは思わないでください。
私達にできることは、世話の仕方と貰い手探しのアドバイスです。
そして、もう1つ大事なお願いがあります。
捨て猫を拾ったことを警察に届けてください。
犬や猫を捨てることは犯罪です。
以前は30万円以下の罰金でしたが、平成18年6月からは50万円以下の罰金を科せられます。
捨てた人に罪の重さをわかってもらい、反省していただきたいと心から願っています。

幼い命を助けることは大変なことです。特に注意していただきたいことは次の点です。

1.子猫は体温調整ができないので、必ず保温してあげましょう。
人間にとって暖かく感じても、子猫にとっては不足の場合が多いので逃げ場を作って高めの保温をしてあげてください。

2.汚いからといってすぐに洗ってしまうのも危険です。
体力を消耗させ、過大なストレスをかけてしまいます。
できるだけ早く獣医さんに診てもらってください。

3.乳飲み子は市販の猫用ミルクを猫用の哺乳瓶で飲ませます。
猫用ミルクが手に入らない場合は、スーパーなどに売っている乳糖を取り除いたミルクか脱脂粉乳を飲ませましょう。
それも手に入らない時はスポーツドリンクでしのぎましょう。

4.生まれて2週間に満たない子猫はうつぶせにしてミルクを飲ませましょう。
仰向けにして飲ませると、気管に入ってしまう恐れがあります。

5.幼い猫は自分で排尿排便ができません。
生後20日過ぎまでは、ティッシュペーパーや柔らかい紙で肛門を揉んでやりましょう。ミルクを飲んだ後はよくオシッコをします。
便秘気味になるとウンチは何日か出ないことがあります。
早い子は生後ひと月になる前に自分でトイレが出来るようになります。
猫は賢いのです。

6.生後20日を過ぎたら、離乳食に挑戦しましょう。
徐々にミルクの量を減らし、離乳食の量を増やしていきます。

7.子猫の世話をするには、ケージ(約120×60×60cm)があると便利です。
寝床(気温に応じてペットヒーターを敷いてやる)、トイレ(約30×40cm)、食器が置けて、なお少しスペースが余るくらいがベストです。




【野良猫との接し方】

猫の福祉を考える者は、野良猫は0になるべきと思っています。
なぜならその生は過酷だからです。
一見外でのんびり暮らしているように見えるかも知れませんが、大半は生き延びるのに必死です。寿命は3〜4年と言われています。
猫を嫌う人も野良猫は0になって欲しいはずです。つまり目標は共通なのです。
ですが、一斉に捕獲して処分では、あまりに情け容赦がありません。
そこで編み出されたのがTNR活動です。

(トラップ=捕まえる)(ニューター=不妊・去勢手術をする)(リリース=元の場所に離す)

欧米の愛護先進国では、野良猫対策の最も有効な方法と認識されています。

野良猫がかわいそうだと、エサを与える人がいますが、与えるだけでは無責任な行動です。
繁殖しないよう努力しなければ、必ず近隣とトラブルになります。
しかも望まれない命、殺されるために生まれてくる命が続出します。
言い換えれば、エサを与えるだけの行為は、他の人にとっても猫にとっても、不幸が広がるだけです。




地域猫・・・言葉の独り歩き】

外にいる猫(ほとんどが捨て猫)に単にエサを与えるだけで、「この猫は地域猫なのよ。」と言っている人が多くいます。これは人と猫の共生を進めていく上において、非常に迷惑な話です。
本来、地域猫活動は猫嫌いな人や猫に迷惑している人にも理解してもらわなければなりません。
エサを与えるだけでは、次から次へと子が生まれ、近所から疎まれるばかりでなく、自身もお手上げ状態になってしまいます。そういう現場を数多く見てきました。
そうなってからでは手の出しようがないのです。
地域猫と言うからには、オスもメスもすべて不妊・去勢手術を済ませて、しっかりと世話をするグループが必要です。
世話する場所は公共の場所が良いとされています。
ということは行政の理解・協力も必要となります。
以上の条件をクリアーして初めて地域猫活動が行われているといえます。
安易に地域猫という言葉を使うことは慎みたいものです。




【最後に】

猫は死に際を人に見せない、とよく言われますが、室内飼い等により、飼い主と深い信頼関係で結ばれている場合、飼い主の腕の中で安らかな最後を迎える子が多いそうです。
これこそが最愛の猫との理想の別れ方ではないでしょうか。
人も猫も感謝に満ちた最後を迎えていただきたいと心より願っています。




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